おうし座パパの子育てエッセイ

5人の子どもを育てたパパのこころ温まる記録

ハンドパワーです

 ある日幼稚園に通っている三女が「パパ見てみて」と云いながら近寄ってきた。娘は左手で鉛筆を握り、手の甲を見せ「ハンドパワーです」と云うと、パッと握った手を広げた。すると鉛筆は宙に浮いているのだ。「凄い!」私はとても驚いた。驚いたというより、驚いたふりをしていた。せっかく幼稚園で仕入れた手品のネタだ。見れば種はすぐ分かる。そこは親として付き合ってあげないといけないと考えたのだ。娘は右手で左手の手首を握り、人差し指で鉛筆を押さえているのだ。しかし、そこで種明かしをすると白けてしまう。私は「もう一回やって」とリクエストした。そしてもう一回やってもらった後に「これ、知ってる?」と言ってその鉛筆を受け取った。「鉛筆って硬いよね」と言いながら、鉛筆を曲げる仕草をする。もちろん鉛筆は曲がらない。そこで、鉛筆の先を親指とひと指指で摘み、ヒラヒラさせると「なんと不思議なことに鉛筆はグニャグニャになってしまいました」と言って自分の手品を見せた。

 実は娘がハンドパワーですと云って最初にその手品を見せてくれたときに、すぐにでもこのヒラヒラを見せたくてうずうずしていたのだ。そこはぐっとこらえて、もう一度ハンドパワーを見せてもらったという訳だった。子どものときに、大人から教えてもらった手品を娘のハンドパワーで思い出したのだ。

 人の脳の中には様々な記憶が眠っている。ときどき、子どもと遊んでそんな記憶を呼び起こすことが脳の活性化に繋がるのかもしれない。