おうし座パパの子育てエッセイ

5人の子どもを育てたパパのこころ温まる記録

息子への土産

 先日、仕事で訪問したお宅の奥様にドーナッツを土産にいただいた。小さな袋に入ったものだった。車に戻り、食べようかとも思ったが、ふと息子の顔が浮かび、食べるのを止めた。そして土産にもって帰り息子に食べさせたのだ。親とはそういう者だと思う。そして、あることを思い出した。

 数年前のことである。仕事でアメリカへ行った同僚が社員一人一人に土産物を買ってきたのだ。ハーシーズのチョコレートで300mlのペットボトル程の包みだった。そのときも私はその土産を家に持って帰り、子どもたちに食べさせた。しかし、そうではない者が1人いた。彼は、すぐその包みを開け、ボリボリと食べ始めたのだ。そして、あっと言う間に食べ終わってしまった。その量は多く、絶対にカロリーオーバーだろうと心配になった。何しろ彼は以前、脳梗塞で入院したこともある人である。それを一人で食べるのは本人の自由だからなにも言わなかったが、彼には息子が2人いたはずだ。その子たちや奥様に持って帰らないのかな~とも思った。

 聞くところによると、彼の息子さんはそのとき、大学受験を控えていて、勉強の邪魔になるから早く家に帰らないよう奥様に言われていたそうである。そのため、仕事が終わってもすぐ帰宅せず会社で時間をつぶしていた。毎朝、会社でコンビニ弁当の朝ご飯を食べ、みんなが帰った後も、会社でカップラーメンを食べていたようだ。勝手な憶測だが、彼は家に居場所がないのかもしれない。そして、自分の部屋もないのかもしれない。

 誰にもあげないぞ!という勢いで一気に食べていた彼の姿を思いだしてしまった。子どもの受験のために、その環境を提供している彼の子育ての姿かもしれない。