おうし座パパの子育てエッセイ

5人の子どもを育てたパパのこころ温まる記録

手作りブランコ

 三女が幼稚園に通い始めた初夏の頃、その幼稚園で父兄同伴のピクニックの行事があった。当時東京都中野区に住んでいたが、行った先は練馬区にある光が丘公園だった。私は妻と四女の娘を連れての参加だった。
 
 昼食の時間になり、公園内の木陰に座りそれぞれの家族が持ち寄ったお弁当を食べ始めた。私はお弁当を早めに済ませ、近くにあった木の枝にロープを2本掛けて、簡単なブランコを作った。枝の高さはちょうど私が手を上に伸ばした位置だった。もし、適当な枝があったらブランコを作ろうと思い、予めロープを用意しておいたのだ。そして公園の中に落ちていた60センチ位の太い枝を座面として2本のロープに括り付けた。私は独身時代、ヨットを趣味としていたのでロープワークはお手の物である。食事が終わった娘に座らせて、試しにこいでもらった。完成具合は上々であった。
 
 すると、3人位の子どもたちがすでに並んでおり、さっそく「か~わって♪」と声を掛けてきた。え?私はちょっと面食らった。自分の娘を遊ばせるためにブランコを作ったのに、他の子のことは考えてもいなかった。しかし、誰でもブランコは好きである。眼の前にブランコが突然現れれば、乗りたいと思うのは自然のなりゆきである。娘も「いいよ~」と言って快くブランコを譲ってくれた。そしてその順番待ちの列はみるみるうちに長い列になってしまった。先生たちも集まって来られて、子どもたちが安全にブランコに掴まるように介助してくださった。そんな様子を見ていて私も妻も、みんな喜んでくれてよかったと思った。

 その年の秋、私たちは千葉県に転居したのであるが、娘が転園する際に頂いた寄せ書きには、その時のブランコの思い出を書いてくださったお母さん方のメッセージがあった。それはいとも簡単にブランコを作ったことが驚きであり、感動だったとお褒めの言葉だった。心に残るような思い出のひとつになれて本当に良かったと思う。多分、当の娘は覚えていないと思うけどね。